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京都地方裁判所 昭和52年(わ)201号 判決 1977年5月26日

本籍

京都市中京区新京極通四条上る中之町五六四番地

住居

右同

漢方薬小売業

阪本惣太郎

明治四〇年三月二五日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官佐藤信昭出席のうえ審理し、つぎのとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金二、四〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は京都市中京区新京極通四条上る中之町五六四番地で漢方薬小売業を営んでいるものであるが、自己の息子のために店を設けてやりたいとの意図からその資金を捻出しようとし、そのため所得税を免れようと企て、

第一  昭和四八年分の総所得金額は四、二八六万一、四六四円でこれに対する所得税額は二、二三二万四、一〇〇円であつたにもかかわらず公表経理上売上金の一部を除外し、これによつて得た資金を仮空名義の預金にするなど所得を秘匿したうえ、同四九年三月一三日同区柳馬場通二条下る等持寺町一五番地所在の中央税務署において、同税務署長に対し、同四八年分の総所得金額は三六四万一、五三八円で、これに対する税額は四六万一、一〇〇円( この金額には計算の誤りがある。)である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よつて不正の行為により、右正当な所得税額と右申告にかかる総所得金額に対する所得税額五六万八、五〇〇円との差額二、一七五万五、六〇〇円の所得税を免れ、

第二  同四九年分の総所得金額は六、三八四万九七六円でこれに対する所得税額は三、四四四万七、三〇〇円であつたにもかかわらず、前同様方法により所得を秘匿したうえ、同五〇年三月一〇日前記中京税務署において同税務署長に対し、総所得金額は三四二万五九二円でこれに対する所得絶額は三二万七、九〇〇円(前同)である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よつて不正の行為により右正当な所得税額と右申告にかかる総所得金額に対する所得税額四四万二、一〇〇円との差額三、四〇〇万五、二〇〇円の所得税を免れ、

第三  同五〇年分の総所得金額は八、四一八万八、四八九円でこれに対する所得税額は四、八四二万三、五〇〇円であつたにもかかわらず、前同様の不正の方法により所得を秘匿したうえ、同五一年三月一一日前記中京税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は三一八万四、七二三円で、これに対する所得税額は二三万八、四〇〇円(前同)である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よつて不正の行為により、右正当な所得税額と右申告にかかる総所得金額に対する所得税額三五万八、八〇〇円との差額四、八〇六万四、七〇〇円の所得税を免れ

たものである。

(証拠の標目)

(判示全事実につき)

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書(二通)及び大蔵事務官に対する質問てん末書一七通(検七五乃至九三号)

一  阪本典子の検察官に対する供述調書(検九号)

一  阪本典子(二通)、湯浅昭三、阪本直道(三通)及び大森ミヤ子の大蔵事務官に対する各質問てん末書(検六乃至八及び一〇乃至一二号)

一  長岡範夫、人見幸夫両名中村正考及び上原広一の大蔵事務官に対する各供述書(検四一乃至四三号)

一  平木泰雄(三通)信谷昇(二通)山咲富夫(三通)中川勇、宮崎八郎(二通)綾田茂晴、若林卯三郎、藤本圭一(八通)小谷吉雄、浅尾実、斉藤賢二、大原孝一、佐藤正美及び湯浅昭三作成の各確認書と題する書面(検一六乃至四〇及六七六八号)

一  田口良則、中村浩忠、上野朝生、高木正太郎斉藤方良(二通)日本生命保険相互会社、千代田生命相互会社料金課長(二通)安田生命保険相互会社吉田寛、森本船夫、三井信託銀行株式会社京都支店及び京都地方貯金局(二通)作成の大蔵事務官に対する各回答書(検四七、四八、五一乃至六一号六五号)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書七通(検一四、一五、四九、五〇、六三、六四、六六号)

一  大蔵事務官作成の告発書(検一号)

一  大蔵事務官作成の証明書(検五号)

(判示第一の事実につき)

一  大蔵事務官作成の証明書(所得税確定申告書謄本)(検二号)

一  大蔵事務官作成の説明書二通(脱税額計算書資料貸借及び損益)(検六九、七〇号)

(判示第二の事実につき)

一  大蔵事務官作成の証明書(所得税確定申告書謄本)(検三号)

一  大蔵事務官作成の説明書二通(脱税額計算書説明資料貸借及び損益)(検七一、七二号)

(判示第三の事実)

一  大蔵事務官作成の証明書(所得税確定申告書謄本)(検四号)

一  大蔵事務官作成の説明書二通(脱税額計算説明資料貸借及び損益(検七三、七四号)

(法令の適用)

被告人の判示第一乃至第三の各所為はいずれも所得税法二三八条に該当するところ、所定刑中懲役刑及び罰金刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪なので懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条一項により右懲役刑を併科することとし、情状により所得税法二三八条の二項を適用し、刑法四八条二項により判示第一乃至第三の各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年六月及び罰金二、四〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、本件脱税額は一億円を越えるもので被告人の刑事責任は重大なものがあるが本件犯行後深く反省自戒していることや相当の年令であるし、脱税発覚後二億円程の税金を納入して脱税による利益も殆んど残しておらず自己の弁護ににも弁護士さえ選任していないことら諸般の事情を考慮し、同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 藤川真之)

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